The Materials of Guitars vol2 "Rosewood"(ローズウッド)
ローズウッドといっても「薔薇の木」のことではなくマメ科に属し、中南米、アジア、アフリカ等熱帯~亜熱帯に産するこの種の樹木は数百にも及ぶそうです・・・独特の油脂分を含む種が多く、伐り出す時にバラの花のような芳香を放つことからこの名がついたようです。また加工時に皮膚が弱い人には皮膚炎(かぶれ等)を起こすものが多いことでも知られており、油脂分のために乾燥に非常に長い期間がかかり(製材して木材製品用に加工できるまでに数年~数十年を要するものがザラという)、接着にも難があること、比重が重く硬い材質なために加工性があまり良くないなどのデメリットがありながらもそれを超える魅力のある音質を持っているために特にギター用としては不動の人気を誇る唯一無二の材として君臨しています。全てのギターの指板材(ブリッジ材)として、アコースティック・ギターのボディ材(サイド・バック)やヘッドの付き板等に多用されるこの材の代表的な数種について今回取り上げてみようと思います。なお別名としてパリサンドル(Palisander)という名称が英語圏以外では使われていますが、私も紛らわしい「ローズウッド」よりこちらのほうが良いと思っています(木材王でもあるヤマハさんに賛同して・・・ヤマハはインド産[本]ローズはパリサンドル、インドネシア産[準]ローズはソノケリンと正式に区別している数少ない信頼のメーカー)。
前回のマホガニーの回と同じくウッド・フォーラムのサイトに良くまとまったローズウッドのpdfがありますのでまずこれにリンクさせていただきたいと思います!
http://www.wood-forum.jp/_userdata/b-rosewood.pdf
上記サイトでソノケリン(Sono Keling)のことをソノリケンとありますが、単純な間違いだと思われますので読み替えてください。また私の前回のマホガニーの記事でもソノケリンの和名を「手違い紫檀」と説明しましたが、正確には「手違い紫檀」とはチンチャン(Ching chan)のことで古くからある「唐木」の一種で、同じマメ科ではあるもののローズウッド(紫檀)とは全く別種の材であることをここで追記させて下さい・・・ソノケリンはインド・ローズ(熱帯産)を近年にインドネシア(亜熱帯)に移植・造林したものなのでそれほど古くからある樹木(自生)とは言えませんよね。ギター用としてチンチャンが使われた例は私は見たことがなく、おそらくそれほど多量に流通している木材でもないことからほとんど使用例はないと考えて差し支えないと思われます。
多種多様なローズウッドの分類にはやはり産地域ごとの分類がそれぞれの特色をつかみやすいと思われます。①が最も高価で入手困難な材、⑤が最も安価で容易に入手できる材という順番でほぼ間違いないと思います。
①中南米産(熱帯~亜熱帯)・・・ハカランダ(ブラジリアン・ローズ)、ホンジュラス・ローズウッド(ニュー・ハカランダ)、ボリビアン・ローズウッド(パーフェロー/モラド)、ココボロ等。ブラジル・バイア州のアマゾン川流域一帯に自生する熱帯雨林のマメ科一種をハカランダと言い、ワシントン条約で絶滅危惧種として厳しく取引規制されています。それ以外のブラジル産ローズはハカランダという名称ではなくパリサンドル(サントス・パリサンドル等)として少数流通していますが、造・植林のものも多いと思われます。ほとんど入手不可能なハカランダにかわる自生の希少材としてはホンジュラス・ローズやココボロが有名ですが現在では大変高価で貴重な材になっておりこの材のギターは入手困難です。またボリビアン・ローズ(パーフェロー/モラド)は指板材としても有名で、マッカーサー・エボニー(縞黒檀)などと並ぶ高級・高価な指板材です・・・過去にヤマハやKヤイリのボディ材でコーラル・ローズウッドという名称で使用されていた材はこれのことだと思われます。その他メキシコ産のローズなども含めて中南米ローズウッドと総称されますが、材の特徴は非常に木目が細かく複雑な模様を呈する固体が多いので、ほぼ真っ直ぐな木目のインド・ローズとは容易に識別できます。またより比重が大きく硬いためにより煌びやかで明るい音色、優れた遠達性(より広範囲にサウンドが響く性能)であるとされ、高級クラシック・ギターや高級オーダーメイド・アコギ、マスター・グレード・モデルや個人製作家ギターで使用されています。しかしながらあまり一般的な材とは言い難く、貴重な材故に柾目でなく板目での使用も見られることから当たり外れも大きいようで(見た目の美しさでは板目のほうが派手な木目で引き立つ場合もあるためか?)、果たして高価な値段に見合う価値のものか?という疑問が付く場合もありえると思われます(美しく貴重な装飾品=コレクターズ・アイテムとしてなら価値はあっても楽器としてみた場合は?・・・)。なおこれらの中南米産マメ科のローズウッドと同等の材としてカキノキ科のマッカーサー・エボニー(縞黒檀)やムラサキ科のジリコーテ(シャム柿)なども近年、高級ギター用として使用されるようになっています。参考までに私が所有するホンジュラス・ローズウッドとボリビアン・ローズウッドのギターの画像をあげておきます。
②一部アフリカ産・・・マダガスカル(島)・ローズウッド等。一部のアフリカ産マメ科のローズ種の中には非常に中南米産に酷似したローズウッドがあるようで、値段の点でも性質・音質の点でも①に勝るとも劣らないとされています。当然、高級ギター用材なのでこの材のギターも①に準じて高価です。
③一部アジア産(主に熱帯)・・・(イースト)インディアン・ローズウッド(ボンベイ・ローズ/印度紫檀)等。南アジアに産する、所謂ギター用として正統なローズウッドのことで、造・植林によるものも含まれます。①ハカランダの代用材として広範囲に使用されてきましたが、現在では良質なものは入手困難になりつつあります・・・およそ国産ギターでは20万以上のギター、ギブソン・マーティン・ギルド・クラスで20~30万以上(相当質にバラつきあり)、テイラー・ラリビー・クラスで40~50万以上、それ以外の有名手工メーカー(コリングス、サンタ・クルーズ、ローデン等)で60万以上となっています。音質的にはマホガニーと人気を二分する材で、マホガニーが「柔らかく、温かく、広がり感のある」サウンドが特徴であるのに対して、ローズは「明るく、力強い大きな、透明感のある」サウンドが特徴です。私見ではマホガニーが3本中2本がアタリの個体ぐらいの確率で、比較的安定した音(品)質な材であるために安心して在庫から選びやすい(=良否の判断が簡単)のに対して、ローズは3本中1本がアタリなのが関の山ぐらいの確率なので、個体差が大きいのですが見た目(木目の良し悪し)だけではほとんど判断がつかないものなので、最低同じモデルを3本は試奏・比較して選ばないと危険だと思っています(逆に3本同じモデルを弾いてみればそのモデルの標準を知ることが出来て、場合によっては3本共選ばないという選択も可能)。・・・私は実際にこうしてアルバレツ・ヤイリのFYM-95を3本中から選んで納得して購入しました。ローズの高価なギターを買うのなら同じモデルを3店回ってでも最低3本は確認したほうが後悔しない可能性が高いということです。特に材(サウンド)に拘りがないのならマホガニーの方を私がすすめるのはこういう理由からです。同じく参考までに私が所有するこの材のギター画像をあげます。
④アフリカ産・・・ウェンジ、パオロサ、ブビンガ、パドゥク、オバンコール等。ウェンジやパオロサは私にとって未知の材ですが、①②③と貴重になっているローズウッド種に類するマメ科の材の中でも今後に期待できる質を備えたアフリカ産材は多いと思われます。それぞれ他の産地のローズ種とは違う明確な個性を持っているものがこの産地には多いようです。前回詳述したアフリカ産マホガニー種(センダン科)と並んでアフリカ産ローズ種(マメ科)は未来への輝ける星(!)ともいえる優良木材の宝庫なので、是非とも無駄にすることなく造・植林を並行しながら大切に大切に活用していかれることを切に希望しております(その意味では楽器の値段はある程度高価な方が良いのかもしれない?)。ブビンガは高級ドラムのシェル(胴)材として有名で、近年和太鼓の材としても注目されている材です。ギター用としてはネックの一部(サンドイッチ構造の中心)材として使われている例があります・・・強度的に優れているのは確かなようですが、ボディ材として使えるほどの音響特性を持つものかは未知数だと思われます。パドゥクも同様にエレクトリック・ギターのネックの補強材として使用されることがあるようです。またアフリカン・ブラックウッドやスネーク・ウッドと呼ばれる他科の、ほぼ黒檀に類するような材も注目されているようです。以前から良くギターのボディ材として使用されてきた材でありながら、現在その音質の素晴らしさを再確認するように価値が高まっている材としてオバンコール(マメ科)があります。この材はテイラーやKヤイリ、ヤマハのギター材として名高い材です。以前は3ピース・バックの中心材として(両側はインド・ローズ・・・要するにインド・ローズを節約する目的で)、またインド・ローズの安価な代用材として細々使われる例が多かったのですが、現在ではマホガニーとローズウッドの両方の美点・美音質を兼ね備える材として珍重されるようになっています・・・確かにマメ科のローズ種でありながらマホガニーのような柔らかさや温か味のある音色を持つ両材の中間的音色の材で、ローズに近い美しい縞木目とメリハリのあるレスポンスの良いサウンドも持っているのでこの材のサウンドを好む人はかなり多いと思われます。特に現在はエレクトリック化がすすんでいるためにローズの美点であった遠達性はほとんど重視されなくなってきていますし、レコーディング用途ならむしろマホガニーの音色を好む人も多いので、その点でローズよりマホガニーに近いオバンコールが注目されるのは自然な流れといえるかもしれません。またローズよりは質が安定しているようで、この点でもよりマホガニーに近い、当たり外れの少ない材といえるようです。さらに現在でもこの材のギターはインド・ローズのギターよりも安く買えるので狙い目のギター材であるといえ、特にKヤイリ製のものは非常に質・音色が良いので気になる方はぜひ試奏してみることをおすすめします!!(ギルドGADシリーズ、テイラー300シリーズのアフリカン・マホガニー/サペリのギターと並んで私がおすすめする3大優良・安価なギターです)。
⑤アジア産(主に亜熱帯)・・・ソノケリン、タガヤサン(鉄刀木)、本紫檀(タイ産など)等。前回指摘したとおり、東南アジア産のローズ種はインド産のものよりグレードがおちるというのが一般的ですが、中には良質で希少なものもあります。しかしギター用としては高価な材を使用される例は少なく、安価で豊富な流通量のもの(主にソノケリンなど)を濃く着色して使用するような場合が多いことはあまり知られていません・・・普通にローズウッドと表記されているギター材の中にこれが占める割合はかなり高いと思われます。特に指板材として、また安価なギター(海外産ほぼ10万以下のギターなど)のサイド・バック材はまずこれだと思って間違いありません。しかし上記①②③がどんどん希少・高価になるにつれ、今後は東南アジア産の希少・高価な優良材もギター用として使用される例は増えていくと思われます。現に個人製作家(所謂、ルシアー)の高価なギターの中にはこういう材が多いことも確かです。様々な点からもアフリカ産ローズ種と共に東南アジア産ローズ種もギター用材としてこれから注目を集めていくことになると思いますが、これらに類するような他科の木材も含めて未知の木材がギター用として適性を吟味された上で使用されていくことになるのは必至のことと思われます。
ソリッド・エレクトリック・ギターのボディ材としてローズが使用された例は非常に少ないのはこの材が非常に重いためだと思われますが、現在軽い木材が主流になっているため(バスウッドのような)今後ともローズが(表面だけの張板)化粧板として以外のブロック材として使用されることはたぶんないと思われます。過去ローズがムクのブロック材として使用された例はフェンダーのテレキャスターが有名で、ビートルズ末期・解散直前(レット・イット・ビー録画時)の頃にジョージ・ハリソンのために製作されたスペシャル・カスタム・ギターがありますが、ワシントン条約発効前後だったこともあって贅沢にもハカランダが使用されていたそうです(しかもオール・ローズで、ネックも指板も)・・・レット・イット・ビー映画中にもこのギターをジョージがプレイする場面がありますよね! さぞかし重いギターだったことでしょう(肩の骨を脱臼しそうなw) ジョージはこのギターを第三者にあげたようですが、後に後悔して返してくれるよう頼んだそうですが、その人物はこれを断ってかなり後に(ほとぼりがさめた頃に)オークションに出して大金を得るよう目論んだそうですが、それを知ったジョージがこれを買い戻したそうで結局本来の持ち主の元に戻ることになって「めでたし、めでたし」みたいな・・・! そんないわくつきのギターだったのでした。その他このフェンダーのコピー・モデルとしてジャパンのインド・ローズ材のオール・ローズ・テレがありましたが、これは私も過去試奏したことがありましたが非常にファットでロング・サスティーンのギターでテレのサウンドというよりはギブソン系ギターのようなサウンドが印象的だったことをおぼえています・・・すでにこのギターも中古市場でプレミアがついて取引される高価なギターになっているそうで、「こんなことならあん時買っとけば良かった」と今さらながら思ったりしています。てかあの想像を絶する重さは自分で弾くことを考えると真っ青になるほどでしたが・・・レスポールよりもはるかに重いんですよ(笑) 現在ジャパンから復刻されているこれのまたコピー・ギターは張りローズみたいで、中身は軽い木材みたいです。てかそれじゃ意味ない気もするんですが、値段も安くはないんでやはりあんまし人気ないみたいですね・・・なんか皮肉な感じですよね、軽いローズ・テレはらしくないなんて(笑) いずれにしてもこれらのことからローズウッドという材がいかに魅力的な木材であるかを知ることができるような気がします!
インターバル(音程間)をよむ・・・作曲とインプロビゼーション
何とも壮大なタイトルで(笑) これが簡単にできるのなら誰も苦労することなんてないのですが、作曲と即興演奏(即興で作曲しながら演奏=インプロビゼーション)の上で役立つ理論・知識をまとめてみたいと思います。
とりあえず自分がこれ、この人と思うプレーヤー、コンポーザーの演奏や作品を徹底的に耳コピーすることが自己作品や演奏の質の向上には最も早道だと思いますが、後付でもいいので理論的な後ろ盾があればなおのこと良く理解できて確実にそれを意図的に再現できるようになるために(偶然ではなく)、また作曲(譜面上でもMIDIでも)という場面でこれを利用するためにも理論的展開は必要だと感じます。私がギターの即興演奏で最も影響を受けたのはパット・マルティーノとジム・ホールという2人のジャズ・ギタリストですが、前者の流麗で自由自在なスケール・ワークと高速フレーズに、後者にはほとんど天才的ともいえるメロディ・ライン/コード・ワークの展開や「ハッ」とさせるような(霊感にあふれた)閃きに非常に深い感銘を受けてのことでした・・・とはいってもまだまだ彼らの足元にも及びませんが、彼ら自身が自己のプレイ・作品を構築する上でもやはり理論的なバックボーンがあってこそ成り立っていることを考えればこれを解析することで彼らの辿った道筋をまた辿ることも可能になるのでは?と考えています。
パット・マルティーノには独自の経験に基づくアドリブ方法論である、「マイナー・コンバージョン」という独自理論がありますが、これはコードからそれに協和するスケールを導き出す理論の一種で、全てのコードをいったんマイナーに変換し、そのコードに協和するマイナー・スケール系のスケールでアドリブするというものです。考え方の基本は、ある長調の平行調の短調はスケール構成音が同じであるところからそのマイナー・スケールをメジャー・コード上で使うというところからきていますが、これはロックで多用されるペンタトニック・ブルース・スケール(5音階/Ⅰ・Ⅲ♭・Ⅳ・Ⅴ・Ⅶ♭)が例えばAペンタトニック・スケールがAmでもCmajでも使えることをもっと発展させたものと考えることも可能です。いくつかの変換法則があり、例えばメジャー・コードの場合は6度(3度下)のマイナー(ex,Cmaj→Am)、ドミナント・コードの場合は5度(4度下)のマイナー(ex,C7→Gm)、ハーフ・ディミニッシュ・コードの場合は短3度のマイナー(ex,Cm7♭5→E♭m)のようになります。しかしながら実際にはこの理論のスケール上の音だけでアドリブが構成されているというわけではなく、ケースバイケースでブルーノートや多種のパッシング・ノート(途中経過音)が挿入されていることは言うまでもないんで、この理論はあくまでも簡単なアドリブ方法の一つの「目安」と考えたほうが妥当で、パット・マルティーノのインプロビゼーションの全貌をこれだけで知ることは到底できるわけではなくやはりフレーズをコピーしてそのノウハウを得るしかないとそう思われます・・・その意味では後述するアバイラブル・ノート・スケール理論(バークリー・メソッド)やリディアン・クロマティック・コンセプト(LCC)のほうがもっと体系的に構築された総合的な理論ということができるのではないかと思います。
アバイラブル・ノート・スケール(バークリー・メソッド)とは特に現代のジャズ・インプロビゼーションの体系的な理論(方法論)として構築されたものですが、古代の教会旋法(チャーチ・モード/グレゴリアン・モード)から派生した7つの音階を基本に、その他それ以外の数種の音階(=スケール)を網羅してアドリブを構築する方法論と考えて差し支えないと思います。これらのスケールから構築されるコード・プログレッションも当然含まれます。
①Cイオニアン・スケール CDEFGABC' - 全全半全全全半
②Dドリアン・スケール DEFGABCD' - 全半全全全半全
③Eフリジアン・スケール EFGABCDE' - 半全全全半全全
④Fリディアン・スケール FGABCDEF' - 全全全半全全半
⑤Gミクソリディアン・スケール GABCDEFG' - 全全半全全半全
⑥Aエオリアン・スケール ABCDEFGA' - 全半全全半全全
⑦Bロクリアン・スケール BCDEFGAB' - 半全全半全全全
全(音)・半(音)とは各音階間のインターバルを表し、全は長、半は短と読み替えることもできます。①はメジャー・スケール(長音階)、⑥は(ナチュラル)マイナー・スケール(=自然的短音階)のことです・・・したがって以下の2つの派生スケールがあります
⑥’Aハーモニック・マイナー・スケール(和声的短音階)ABCDEFG♯A' - 全半全全半増半
⑥’’Aメロディック・マイナー・スケール(旋律的短音階)ABCDEF(♯)G(♯)A' - 全半全全全全半
⑥’’は一般的に上行がF♯G♯、下行がGFとされていますが、実際には和音がドミナントの場合半音上げ、サブドミナントの場合半音上げなしというように和音構成音によることが多いです。増とは全+半、つまり増二度を表します。これら以外に以下の音階やブルーノート/スケール(広義にはⅢ♭Ⅴ♭Ⅶ♭をメジャー・スケールに加えたフル・ブルース・スケール、狭義には♭5のこと)、パッシング・ノート(クロマティック・スケール=全ての半音を含む12音階など)を含みます。
※ホールトーン・スケール - 全全全全全全全
※ディミニッシュ・スケール - 全半全半全半全
※コンビネーション・ディミニッシュ・スケール - 半全半全半全半
以下に基音をCとした場合の各スケールのインターバルを実音で表記します。
①Cイオニアン・スケール CDEFGABC'
②Cドリアン・スケール CDE♭FGAB♭C'
③Cフリジアン・スケール CD♭E♭FGA♭B♭C'
④Cリディアン・スケール CDEF♯GABC'
⑤Cミクソリディアン・スケール CDEFGAB♭C'
⑥Cエオリアン・スケール CDE♭FGA♭B♭C'
⑦Cロクリアン・スケール CD♭E♭FG♭A♭B♭C'
⑥’Cハーモニック・マイナー・スケール CDE♭FGA♭BC'
⑥’’Cメロディック・マイナー・スケール CDE♭FGABC
※Cホールトーン・スケール CDEF♯G♯A♯C'
※Cディミニッシュ・スケール CDE♭FG♭A♭ABC'
※Cコンビネーション・ディミニッシュ・スケール CD♭E♭EF♯GAB♭C'
※Cフル・ブルース・スケール CDE♭(E)FG♭(G)AB♭(B)C'
ここまでスケールを列挙してきましたが、では実際にどういうコードの場合にどのスケールが使えるか?という法則についてはそのコードの構成音を調べてその全てのノートと一致する構成音を持つスケールを選択することになります。例えばCmaj7の場合構成音はCEGBなのでCイオニアン・スケールかCリディアン・スケールが最も協和するスケールということになります。同じようにDm7だとDFACなのでDドリアン・スケールかDエオリアン・スケール、G7だとGBDFなのでGミクソリディアン・スケールというようになります・・・因みにCイオニアン、Dドリアン、Gミクソリディアンは全て構成音が共通なのでC→Dm7→G7というコード・プログレッションの場合、実質Cイオニアン一発でアドリブができるということに他なりません・・・とこのように書いてくると簡単なようですが、実際即興演奏で瞬時にコードの構成音を把握して使えるスケールを選び出すためには様々なコード・プログレッションの曲を相当量練習していなければ到底できることではありません。また協和するスケールのラインだけで実際にアドリブを構成するとワンパターンで退屈なものになる危険性があるので、適度にテンション・ノートを含んでイン・ゴーイングかアウト・ゴーイングに展開するようなソロのほうが面白くて聴き応えがあるものだと思います。そういう意味からもこのアバイラブル・ノート・スケールを実地で使いこなすのはかなり困難で大変なことなので、私の場合曲をアナライズするためには利用しますが実際にコードが移りかわる度に、やれイオニアンだの、やれリディアンだの考えているわけではありません(笑)それが出来るに超した事はないのですがムリなので、これから説明するリディアン・クロマチック・コンセプトの考え方のほうがまだ理解し易く、応用しやすいものだと思います。
リディアン・クロマティック・コンセプト(LCC)についてはhttp://homepage2.nifty.com/dangozaka/netjltop.htm特にhttp://homepage2.nifty.com/dangozaka/njthatten.htmとhttp://homepage2.nifty.com/dangozaka/netjazztime/LCC/index.htmにまたhttp://www.chromatic-metal.com/lydian.htmlとhttp://www.tanoshiro.com/tanoism/tanoism1.htmlに良くまとまった記事があるのでそちらを参照していただくとして、ここではその基本と応用法について書いてみたいと思います。
インプロビゼーションの基本となるスケールに上段で述べた④リディアン・スケールとその派生型を利用して全てのアドリブを構成しようというもので、以下の7スケールがあります(Cを基音とした例)。
①リディアン・スケール CDEF♯GABC' - 全全全半全全半
②リディアン・オーギュメント・スケール CDEF♯G♯ABC' - 全全全全半全半
③リディアン・ディミニッシュド・スケール CDE♭F♯GABC' - 全半増半全全半
④リディアン・フラットセブンス・スケール CDEF♯GAB♭C' - 全全全半全半全
※リディアン・補助オーギュメント・スケール(=ホールトーン・スケール) 以下上段参照
※リディアン・補助ディミニッシュド・スケール(=ディミニッシュ・スケール)
※リディアン・補助ディミニッシュド・ブルース・スケール(=コンビネーション・ディミニッシュ・スケール)
以上7スケールの構成音を解析すると、12の半音を全て含むクロマティック構成になるのでこれらをリディアン・クロマティック・スケールと呼びます。それぞれのスケールは①の代理として使用可能ですが、以下の理由により番号があがるほどテンション・ノートが増えていくアウトなスケールになっていきます。
5度圏 - Wikipediaより
Cのサークル・オブ・フィフス(5度圏=倍音列)を順に並べるとCGDAEB][G♭D♭A♭E♭B♭Fとなりますが←]を♯域、[→を♭域にわけることができ、この順番でCに対して協和度(親和性)が低くなっていくと考えられています・・・しかし実際にはCに対して半音上のD♭が最もテンションが高い不協和な音になると思われるので、D♭はFのあとにくると読み替えるのが妥当であるといえます。またこれらの理由でCイオニアン・スケール(F)よりもCリディアン・スケール(F♯=G♭)のほうがCmajに対して協和度(親和性)が高いと見ることができます。
最後にこのLCCの応用方法ですが、基本的には上段アバイラブル・ノート・スケールと同じと考えて良いと思います。しかし大きく違う優れた利点は全てのコードに対して必ず協和する(C~B)リディアン・スケールが存在することであり、基本的にこの音階さえ覚えてしまえば全てのコードに対してアドリブが可能になるという非常にシンプルな理論である点であり、特にギターなどの楽器ではポジションで習得する点を利用して、殊更音名を意識していなくてもフレット移動によって同じ「型」で異調(C~B)することが可能なので非常に有用な理論となることだと思います。そのことによって煩雑なアバイラブル・ノート・スケールの①~⑦に相当する部分を一つに統合することができるので、あとはケースバイケースでLCCの②~④の派生系を応用すること、※の3スケールの応用方法に段階的に集中していけば良いので他の理論よりバリエーションを習得するのは楽で素晴らしい実利を持つものであることは間違いありません・・・そういった点が多くのジャズの巨匠に認められて利用されてきた理論な所以であるように思います。さらに1.イン・ゴーイング・バーティカル 2.アウト・ゴーイング・バーティカル 3.イン・ゴーイング・ホリゾンタル 4.アウト・ゴーイング・ホリゾンタル という4つの考え方を持っており、バーティカルというのは縦軸(コードの積層)のことで現在地点をあらわし、ホリゾンタルというのは横軸(時間の推移)のことで曲全体・一定の部分をあらわしているようです・・・つまり1で小節内で解決するようなこと、2で離反するようなこと、3で曲のキーになるようなこと・一定の小節で解決するようなことや、4で離反する過程を規定するような方法論だと思われます・・・こういう考え方はアドリブ・フレーズにメリハリ(緩急、明暗、冷暖等)を与えてカラフルで面白いものにすることを模索する上で、また例えばテンポによっては16分音符以上の細かく早い音価の動きならクロマティックなフレーズでもアウトな部分が特に気になることなくスムーズにコードと調和するようにフレージングできるようなことに有効に作用すると思います。高度にこの理論を応用するのはやはり困難には違いないですが、習熟するにつれて徐々にその真価を発揮する価値あるものだと思います!!
音楽 第4の道へ part2 [Demoあり]
The Materials of Guitars vol1 "Mahogany"(マホガニー)
今回よりギターに使用される各種木材について私の知り得た情報等を元にエッセイ風に綴る記事を不定期ながらシリーズで続けていきたいと思います。
第一回目として最も各種ギター(クラシック・ギター、スティール弦アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター等)に汎用される木材をと考えましたが、順当にマホガニー、ローズウッド、メイプル等という順番が相応しいだろうということで選んでみました。ネック材として、またボディ材として最も多用されるのがマホガニーですが、ローズはエレクトリックでは指板材としては使われても重量が重過ぎるためボディ材として使用された例は稀ですし、メイプルはクラシック・ギターの材料として使用される例は稀です。しかし(ギタリストにとって)あまりにも身近なためか、またはローズやメイプルほどの派手で美しい木目を持たないためか地味な印象を持たれがちであまり話題にのぼる事もなく、したがって多用される割にはその材についての知識が一般的ではないように感じられます。これはギター用木材としても唯一無二のオールラウンダーであり、類稀な優良音響特性を持つ稀有な木材であるマホガニーにとって残念なことだと思いますし、現在その原料木材価格が高騰して凡そ20万円以下のギターでは良質なものがなかなか見出せなくなりつつあるローズやメイプルと比較してまだ現在でも安価なギターで良質なものが入手しやすい材料である点も見逃せない点です・・・60年代末期をもってワシントン条約でその輸出入を規制されたハカランダ(ブラジリアン・ローズウッド)は70年代には市場で(ギターとして)みる機会は激減しましたが、その代用材であるインド産本紫檀(インド・ローズウッド)はこれも成長が非常に遅い木材である点で有名で、植林しても追いつかない莫大な需要のために既に枯渇してきており、ギター・メーカーでは新規に材料として購入するのが難しい状況なほど原料高騰しているので在庫のこの材を使った(特に単板で)ギターを値上げしつつ他の材に徐々に切り替える方策をとっているところがほとんどです。詳しくはローズウッドの回で詳述しますが、以上のこともあって現在安価なギターでローズウッドとして表示されているものの中には所謂、本ローズ(インド産)ではない、「手違い紫檀」といわれるインドネシア等東南アジア産のローズウッド=ソノケリン等がほとんどではないか?と思われます。ソノケリンはインド・ローズを植林したものなので確かにローズウッドとの表記は間違いではないのですが、気候の違いから早く成長する性質に種が変化してしまっているそうで、そのためインド・ローズに比べて木目が粗く雑な二流品とされています。多くはこれを着色して指板材やブリッジ、アコギのサイド・バックの合板の材料などに使用されているようですが、メーカーによってはこれを濃く着色してインド・ローズに見せかけて単板としてボディに使用する例もあるようなので注意が必要です。もちろん全てが粗悪材とはいえませんが、昨今ローズウッド使用ギターの著しい音質の低下が取り沙汰されることが多くなった原因(このために現在40万の新品より20万で7~80年代の中古を買うほうが良い場合があるという意見も多い)がこのことと無関係ではなく、本来ギター・ボディ用としては使用されなかったような質の悪い板目(=柾目でない)インド・ローズと共に問題の種になっているようです。後述しますがローズウッドの場合と同じくマホガニーも厳密には本マホガニーと呼べるのは中南米原産の3種のみなんですが、90年代初期にやはりワシントン条約に絶滅危惧種としてあげられてからその流通が激減して、現在はそれ以前のデッド・ストックか?出所の怪しい不確かなものか(おそらく密輸か)?のどちらかがレア材として非常に高価な値段で少数取引されていますが、幸いなことにギター用としては本マホガニーに勝るとも劣らない良質のアフリカ産代用材がまだ比較的安定的に流通している段階です・・・しかしギター用優良材がことごとく不足する事態になっている現在、この状況がいつまで続くかは不透明で、その根拠としてアフリカの一部の産地のマホガニー類が需要を見越した業者によって買占めされたために原料価格急高騰が一時的に起こったり、東南アジア産の類似材(とはいってもマホガニー類、センダン科ですらないラワン=メランティに近いような種)がマホガニーと呼ばれて市場に出てきたりして混乱がすでに起こっています。おそらく現在のように優良なアフリカ産マホガニー類(センダン科)のギターが20万以下で手に入るのもここ数年の間だけになりそうな気配が濃厚なので、新品・安価で優良材のギターを手に入れたい方はこの後段の記事を熟読していただいて出来るだけ早期にアフリカ産マホガニー類のギターを入手されることをおすすめします! たぶん10年もの後にはバイオリン属のように100万円(という単位)以上出さないとまともなものは入手できない(木材製のものは)という時代になる可能性も否定できません。
マホガニーについて良くまとめられた情報をみつけたのでまずこれを参照してみてください。
http://www.wood-forum.jp/_userdata/mahogany.pdf
ウォールナット、チークと並んで世界三大銘木とされているのは、加工性の良さと乾燥後・製品の安定度の高さゆえだと思われますが、西欧では高価なものの代表として銀食器と並んで引き合いに出されることが多いのがマホガニーの家具だったりしますが、見た目それほど豪華な木目・風合ではないことが日本人なら少し違和感をおぼえる点ではないでしょうかね?(色は独特だが・・・) 前項でふれたとおり本マホガニーといえるのはセンダン科マホガニー属(Swietenia)の3種(中南米原産)①キューバ(スペイン)マホガニー/S.mahogani(L.)Jacq.②ホンジュラス(オオバ)マホガニー/S.macrophylla King③メキシコ・マホガニー/S.humilis Zucc.で、産地としてはブラジルなども含まれます。しかし前述のとおり90年代以降一般的に流通しているのはアフリカ産のものであり、単にマホガニーといった場合はほとんどこれを指すと思って間違いありません。中南米産を指すものはホンジュラス・マホガニーという名称が一般的で、その他トロピカル・アメリカンだのとかの紛らわしいものも幾つかあります(笑)・・・ホンジュラス以外の中南米産ということでしょうかね?
今回ここで言及するアフリカ産マホガニーは広義にはアフリカン・マホガニーと呼ばれますが、狭義にアフリカン・マホガニーという名称の種類もあってやはりややこしく混乱しています(笑)。その他サペリ(マホガニー)、ガボン(マホガニー)、マコレ(チェリー・マホガニー)等が楽器用として有名で、特にテイラーのギター材として名高いサペリは前項で述べたとおり買占めにあったりして原料価格が乱高下したいわくつきの木材ですが、ギター用としてモノによっては本マホガニーを凌ぐ良い音質との評価があるほどの良材・個体が存在することで知られています。またガボン・マホガニーもKヤイリが採用していることで有名で、同じく素晴らしい音質のオーダーメイド・ギター用として知られています。その他単にマホガニーとしか表示されないこれらの中の種類も多いのですが、アフリカ産の特徴として柾目で非常に美しい「リボン杢」とよばれる木目があらわれるものが多く、これが規則的に出た個体は特に高価な値が付くようです(ピアノの外装用化粧板などにも使用される)。塗装後の豪華な美しさはインド・ローズウッドにも匹敵する独特な風合を持つので中南米産の単調で特徴のない木目より意匠的に好まれる場合があることも頷けます。以下に私の所有するGuildギターのアフリカ産マホガニーのリボン杢材の画像をあげておきます。
Ibanez SS500VLS part3 [Demoあり]
音楽 第4の道へ part1 [動画あり]
音楽を表現する、またコミュニケーションする方法には
①演奏(歌唱も含む、ライブ、口頭・実演伝承等)
②記譜(楽譜による視覚的表現。③が登場する近代までの音楽の主な発表・伝承手段)
③録音(媒体を再生することで常時、鑑賞が可能。演奏の同時性ということを覆し、繰り返し再現可能な芸術にした画期的な手段)
等があります。
②が発達したことによって音楽はより高度な段階に到達したといえると思いますが、これそのものが音楽作品として成立しているのではなく、あくまでそれを演奏して音楽として表現して初めて価値を持つものであることは言うまでもありません。ただし、音楽を解析して正確に再現するためには現在でも必要不可欠なものであることもまた事実ですが。③はこれ自体が作品として成立するものなので、現代音楽でのミュージック・コンクレートなどの手法で芸術として盛んに具現化されてきました。これは今日のDTM、所謂広義でのコンピューター・ミュージックの直接の祖先にあたるものといっても差し支えないでしょう。またそれ以外にも録音芸術という分野がテクノロジーの発達と歩調を合わせて成立することになっていきますが、一例としてピアニストのグレン・グールドのように極度に繊細な感受性の持ち主であるが故に、演奏会での場の空気に左右されての演奏の不確実性が耐えられないものになってしまい、自らの理想の完全芸術を実現するためには録音という手法以外には選択肢はありえないとの結論に至ったことから以後いっさい演奏会活動は行わず録音に専念した演奏家も存在します・・・彼の残した録音中で特にJ.S.バッハの諸作品は彼の境地に辿り着ける演奏家は未来永劫に現れることはないだろうとの孤高の評価を得ています。逆にスタジオでの録音より演奏会形式でのライブ録音を好んだレナード・バーンスタインのような指揮者もいて、全身全霊をこめた指揮ぶりは聴衆があってこそ成立したといえる名録音が数多く残っています。一概に録音芸術といってもその実相は様々であるというわけです。
現在、上記3手法に加えてその全ての要素を一つに内包する第4の手法=MIDIが成立しています。つまりMIDIは演奏であり、データでもあり、尚且つ保存・再現可能な媒体でもあります。今日では普通に楽曲の一部、または全部を構成するものになっているので充分にその芸術性は実証されているものといえるでしょう・・・単に人間の演奏の代理というような単純なものではありません。その一例として映画音楽などの分野では高額な費用をかけてオーケストラを雇って、作曲者の意図を解するほどの余裕もない短時間で等閑な演奏を収録するより、作曲者自身がMIDI音源を打ち込みして作品に仕上げるほうがはるかに優れた作品になる場合があるためそれが主流になっています。これはMIDI音源の非常に高度な表現力の向上が可能にしたことですが、実際の演奏を大変に細かくサンプリングしたものなので(数千音色・音量数におよぶ場合もめずらしくない・・・しかもピアノ単体とかで)、ほとんどの場合実際の演奏か、あるいはMIDI音源かを区別するのは非常に困難なほどのものです。この場合の利点というよりは、そもそも作曲者が演奏者を兼ねるのならそれに越した事はないわけで、MIDIに代理で演奏させているというより、逆にMIDIで演奏しているというほうが正しい表現です(すなわちMIDI=演奏する楽器というレベルを認識しているか否かの違いか?)。現代にJ.S.バッハのような偉大な作曲家であり且つ偉大な演奏家でもあった人が生きているとしたら、たぶんMIDIの存在を狂喜することでしょうし、またそれを最大限に活用して優れた作品を創造することでしょう!
さて今回の本題に参りたいと思いますが、MIDIの原型にあたるものは上記②である楽譜にあるというのは異論のないところだと思います。すなわち人やデジタル機器が音楽作品を再現するためのデータとして利用するのが楽譜やMIDIであるということです・・・ここで私が上記で楽譜は音楽作品そのものではないと書いたことをもう一度思い出してください。その意図は単なるデータにすぎないのでそれを「どんな解釈で音楽作品として再現するか?」が重要なのであって、決してデータに忠実なだけが優れた音楽作品としての再現方法ではないということを意味しています。そもそも楽譜というのは作曲家やその時代によっても記譜法は千差万別なので統一した表記というのは望めないものではあるのですが、演奏者の感性に委ねるために抽象的な文言で指示されてる部分もあったりするので演奏解釈というもの自体も千差万別であるのは至極当然のことではあります。つまりはそれで、演奏者個々の個性というものが発揮されてこそその曲が持つ、秘めた多様な魅力を様々な側面から照らし出すことが可能になるとも言えると思います。それはもしかすると作曲者自身にとっても未知なことである場合があって、それ故に演奏芸術ということが成立しているわけです。
ところがMIDIの場合はどうでしょうか? 当然機械が相手なのでデータのとおりにしか表現しません。人間の感覚が持つ「ゆらぎ」というようなものをそれに表現させるためには、そのようにデータを書き込まないことには機械のほうで勝手に判断して表現してくれることは決してありません。逆に言えば周期性や関連付けといったある程度その個人の人間の経験や本能(人格)に基づく特性を全く無視したような表現をさせるようなことも可能であると言えます。つまりこれは極端に言えば小節ごとに別人格の人間が演奏しているような滅茶苦茶な表現ですが、実際の人間がそういう演奏をするのは極めて困難なことなんです・・・全ての人が持つタイム感の癖というものは必ず周期性があると言えます。いずれにしても学術研究用に楽譜を正確にMIDIで打ち込んだようなものはまずほぼ音楽としては極めて退屈なものである場合がほとんどです。PC標準MIDI音源そのものの音色のチープさがまず第一の原因。それから楽譜どおりの音符の打ち込みでは、名人による歌唱における微妙で繊細な歌いまわしのような魅力を表現することが不可能なのが第二の原因。さらに正確な縦割りのジャストなタイミングでは人間の持つファジーな感覚が表現できず、人間らしさや感情が全く感じられないものになってしまうのが第三の原因です。
以上のようなことを踏まえた上で課題曲を提示して、音楽的なMIDIの打ち込みということを研究・実践してみようというのが今回の企画の趣旨です。
今回課題曲に選んだ曲を紹介していきます。1400年頃~1420年頃までに成立したとされる中世の曲集、通称「モンセラートの朱い本」のなかの1曲「処女なる御母、マリアを称えよ(Mariam matrem virginem)」という曲で、3声ポリフォニーとして書かれた曲です。スペイン・バルセロナ近郊のモンセラート山(その景観からギザギザした山の意)、後にビデオでも登場する数々の奇跡を起こしたとして世界中から信仰・巡礼者を集める「黒い聖母像」で有名なモンセラート修道院に伝承される作者不詳の大変有名な曲集です(古今東西の同様な曲集のなかでも粒よりの名曲ぞろいのため)。礼拝堂献堂の経緯からこの曲集編纂についての経緯など詳細については同じソネ・ブロであるratonlaveurさんのcahier http://lecahier.blog.so-net.ne.jp/2010-07-08 に詳しい記述がされていますが、残念なことに長期間記事の更新がないようで非常に惜しいことだと思いますが、どうぞ記事を参照してみてください。とにかく成立当事以前から大変な年間人数の巡礼者で年中賑やかな土地だったようですが、巡礼者たちが厳粛に振る舞って、且つ歌い踊れるような曲集をという趣旨で編纂されたもののようですが、現存する楽譜は10曲のみとなっています。この曲集の顕著な特徴はイスラム教徒に侵略を受けたカタルーニャ地方の名残が色濃く反映されたもので、アラビア色の強い(哀愁感漂う)旋律や音楽形式が非常に明確な点で、カトリック特有のマリア信仰を反映した歌詞と微妙なコントラストを描くオリエンタルな風情があふれている曲集になっています。
次に課題曲を様々な歌唱、演奏形態で演奏された「ようつべ」ビデオを検索していくつか拾いましたのでここで列挙していきたいと思います。
これまであげた伝統的な(古楽形態の)演奏とは違って斬新な解釈で現代的にこの曲集全曲をアレンジしてMIDIで創り込んだなかなか素晴らしい力作ビデオを見つけたので最後にあげておきます。今回の趣旨になにかヒントを与えるようなそんな独自性に満ちた作品だと感心しました! これは例のサント・ドミンゴ・デ・シロス男子修道院のモサラベ聖歌(=モズアラビック・アラビア風な、グレゴリアン)を現代的なビートにのせてミックスし大ヒットを記録したCD以来の衝撃って感じでしょうか?!
今回の企画に必要なもう一つの重要なものを最後にここに集めておかなければと思います・・・それは課題曲の楽譜ですが、伝承された本にある楽譜は所謂「ネウマ譜」というもので、現在表記の楽譜とはかなり異なる古典楽譜です。その成立はグレゴリアン編纂期にまでさかのぼる古い記譜法ですが、実際にルネッサンス期前まで使われていた非常に長い歴史を持った楽譜です。実際これが発明されていたおかげで現代の私たちが古代に演奏されてたような楽曲を知ることができるわけですね! ここでは曲集の現存する全曲のネウマ譜がファクシミリ版で、またここでは課題曲のネウマ譜を現在記譜法の楽譜に変換した楽譜を参照することができます・・・数人の翻訳譜が登録されていますので、pdfのアイコンやエクスターナル・サイト(外部サイト)のアイコンをクリックし、課題曲名のpdをクリックして入手してください。
それでは次回part2で実際にMIDIで打ち込みする過程を詳述したいと思いますが、それまでに興味がある皆さんは独自の「こんなの自分以外には絶対ありえないだろう」というような超クールなMIDIを考えてみてくださいね!!
沈黙
遠藤周作の同名小説で描かれたのは、神の「沈黙」についてでした。
キリスト者(キリスト教信者)である彼の立場から書かれたこの小説は世界(キリスト教世界?)中で広く知られており、20世紀で最も重要なキリスト教文学であるとの評価も聞かれるほどであり、オペラの題材の他、篠田正浩監督による1972年度の映画化が有名であると共に、「タクシー・ドライバー」「最後の誘惑」で有名な監督であるマーティン・スコセッシによる映画化が現在進行中で2013年公開予定だそうです。
あらすじはキリスト教禁教下の江戸時代の長崎を舞台に、外国人宣教師(司祭)が自分の司牧する信者が棄教を受け入れたのにもかかわらず、自分が棄教しない為に拷問を受け苦しみ続けていることを知って、自らの信仰を貫きとおすことより、信者への愛を選ぶことによって棄教を決意(自己犠牲)するが、そのことによって真の信仰の意味を悟る過程を描いたものです。彼は何度も神に答えを求めますが、その度神は「沈黙」でもって答えます。この姿はイエスが受難の時を迎える前、ゲツセマネの園にて祈りの時、やはり「沈黙」をもって答える神に対して「悲しみのあまり死ぬほどである」と述べられた姿にだぶります。いやむしろこのイエスの姿が伝えられて以降、キリスト教社会では繰り返し随所で語られることになってきたテーマといったほうが正確でしょうか? 例えばラース・フォン・トリアー監督のカンヌ・グランプリ作品「奇跡の海」では、知恵遅れの主人公の女性の無垢な無償の愛を描いた作品なんですが、彼女は神と会話することができる設定になっています。しかし肉の愛をおぼえた彼女に対してやがて神は「沈黙」するようになってきます・・・これは「どんな道でも自らが正しいと信じた道を行け」という意味か?神の意思に反した行為をとった者に対する仕打ちの意味なのか?どちらの意味での「沈黙」かはわからないことになっていますが、結果彼女は間違った方向?に(愛する者のために)突進して自らの命を落としてしまいます。しかし彼女の犠牲によって愛する恋人は奇跡的に回復し、彼女自身も間違った行為?をしたにもかかわらず神から祝福され救われるという物語になっています。
・・・常に諭し、教えを与え、導いてくださる神が突如として「沈黙」されることの意味・・・ これは何でしょうか? イエスの身にふりかかった想像を絶するような苦しみについて私たちが知っていることは、その時既にイエスご自身も御存知でした。だからこそ何も黙して語らない神に対して哀しみをあらわにされたのだろうと思います。
Fender HH Thinline Tele VS Squier HH Tele [Demoあり]
最近の推奨「つべ」 vol1 [動画あり]
タイトルどおり、今回は最近ハマッてて良く観聴きしている「ようつべ」動画のブックマークからビデオをリンクしてみたいと思います! 基本的に著作権・肖像権関係の問題もあるので、これまで積極的に自分のブログで取り上げることには躊躇してきましたが、「ようつべ」上に一定期間以上登録されているビデオについては、権利者各位から容認されているものと見なしても問題ないだろうとの判断で(当然、権利者に敬意を払って登録されているもの以外はここでリンクするつもりはないので)、今回からちょくちょくお奨めのものを取り上げていきたいと思っています。
まず最初はこれまでにも度々、多大な音楽的影響を受けてきたことを書いてきた、敬愛して止まないギタリスト、ラルフ・タウナー/Ralph Townerを取り上げてみたいと思います・・・ギタリストとしてはこの方、音楽家(作曲家)としてならパット・メセニー/Pat Methenyと即答するだろううちの一人です。ナイロン・ストリングスの素晴らしさに目覚めたのも彼の影響が大きいですが、最近ではずっと12弦スティール・アコースティック・ギターが欲しくてたまらなくて、彼のビデオを良く検索しては観ていました。ギルドの素晴らしいサウンドの12弦ギターをずっと使い続けているギタリストです。
昨年末から前回にかけて、偶然の経緯でGUILDの素晴らしい12弦アコースティック・ギターと巡りあってそれを非常に気に入って手に入れてきたことを書いてきましたが、それがギルドの12弦という以外、ほとんど何の予備知識もなくただ試奏して音の良さに惹かれたことが購入の決め手になったことは結果的に私にとって良かったことでした・・・サウンド以外の情報は時として余計な偏見を持ってその楽器をみてしまう原因にもなりうる、ただの害悪であることもままあります。例えば「USAフェンダーはそれ以外の製造国のフェンダーより値段が高いのだから、当然音も良くて優れている」といったような固定観念・先入観からくる無意味な価値観ですが、そういう価値観を持って試奏してもたぶん正しい判断はくだせないことでしょう。しかし、自分の判断が正しかったのかどうか、他の人の意見も調べてみないとただの自信過剰なのも悲しいので(笑)、デモをアップして反応を待ったり、製品についてウェブで調べたりしてみたわけなんですけど。まあこのGADシリーズは中国製にしては一般的に非常に評価が高いことがわかりました・・・安い割りに造りや材料が良く、サウンドも上々なので欲しい、あるいは持ってるけどお奨めしたいという人が結構多いです。そうして私も間違った選択ではなかったことが徐々にわかってきてなんかうれしい気持ちです。
次のビデオはギルドの12弦ギターで検索してるうちに偶然みつけたものですが、さすがに12弦ギターの名門・ギルドを使ってるギタリストは(有名・無名は問わず)非常に多く、大変な数のビデオがあり、その中でとても印象にのこったギタリストがJames Blackshawでした。彼は1981年生まれのイギリスのギタリストで、若いのにすでに9枚ものアルバムを出している大変なキャリアの持ち主で、来日経験も一度あるみたいです(東京の某ライブ・ハウスでのギグで)。去年3月中旬にメジャー移籍後2枚目のプロモーションを兼ねた来日の予定だったみたいですが、例の東日本大震災のためにやむなくキャンセルになってしまったようです。若い頃はパンクに傾倒した時期もあったそうですが、12弦によるソロ・ギターは音楽性も技術も素晴らしく、素晴らしい才能を感じさせます。一言ではジャンルを言い表せない音楽性ですが、ポスト・クラシカル、ミニマリズム、フォーク、ワールド・ミュージックなど幅広いバックボーンをもっているようです。エオリアン・ハープのように繰り返されるトラッド調の分散和音の中から哀愁に満ちた旋律が仄かに浮かび上がってきて、一度聴くと忘れられないような魅力を持っています。因みに彼が使っているのはGUILD GAD-212ですが、その素晴らしいサウンドをお楽しみください。
次は、James Blackshawの曲のカバーを弾いてる(たぶん)アマチュアのギタリストの演奏ですが、この人も影響を受けてなのかGAD-212を使っているようです。録画(録音レベル?)状態があまりよくないみたいですが、ギターはやはりなかなか良いサウンドです。こういう曲種は人によって好き嫌いが分かれてしまうかも?ですが、私は結構こういうジャンルは好きなんです。
Pantaleimonというヨーロッパでは割と有名らしい女性アーティストとJames Blackshawのコラボレーションです・・・とはいっても(たぶん)その辺の公園あたりでのストリート・パフォーマンスまがいの演奏みたいですが(笑) なんかひなびた哀愁たっぷりのボーカルもたまらない感じです。これはオリジナルなんでしょうか?それともどこかの国のトラッド・フォークなんでしょうか?本当に良い味出てると思いませんか?
最後はギター音楽とは関係ないですが、フランスの非常に高名なストリート・ミュージシャン、とはいってもちゃんと何枚もCDを出してるプロの音楽家なんですけど、Luc Arbogastのパフォーマンスを取り上げます。彼が何でそんなに有名かというと、髭面のいかつい系で筋肉隆々の男臭い風貌とは裏腹に、女声のアルトの音域で可憐に歌唱する裏声テナー=カウンター・テナー(一時期映画「カストラート」で流行ったけど、所謂去勢アルトではなくあくまで裏声でのアルト)の名手だからですが、ここでの演奏は教会でコーラス隊と共にフランス・ルネッサンス期の大作曲家であるジョスカン・デ・プレの作品(?もしくは作曲者名じゃなくて、コーラス隊の名称がそうかも?)を演奏する大変厳粛で感動的な動画作品になっています。私はクラシック音楽も非常に好きなことは以前度々ふれてきましたが、こういうバロック以前の古楽や中世の音楽(作者不詳のものも多い)、キリスト教イスラム教文化が混在するような宗教曲から民族色が強い世俗曲まで、また職業音楽家としてはほとんど最古じゃないかと思うヒルデガルト・フォン・ビンゲンのような初期ポリフォニー宗教声楽曲の作曲家からそれ以前のグレゴリオ聖歌に至るまで、西洋音楽の源流を辿るうちに行き着いて聴くようになった音楽はたくさんあります・・・ただこのブログでは音楽を聴くことよりもプレイすることがメインになっていますので、あまりこういう話題で書くことはほとんど無いわけですが、しかし今回のようなテーマで好きな音楽を紹介するような機会には、今後も折に触れてこういうプレイする音楽とは関連がないようなものでも幅広く取り上げていきたいと考えています。
Luc Arbogastの関連動画は「つべ」にはたくさんあるんで、興味がわいた方は検索してみてください。彼の音楽スタイルはあまりアカデミックなものとは関係ない土着宗教的、民族的で世俗的なものであり、非常に素朴でひたしみやすいので気楽に気軽に楽しんで聴くことができると思います!



















